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ひみつのとびら
長い読経が終わり、祥太はじいちゃんの遺影に手をあわせた。
澄んだ鈴(りん)の音がひびく。うす目を開けてこっそりとなりを見ると、お母さんもお父さんもまだ手をあわせたまま目を閉じていたので、あわててもう一度目をつぶった。
慣れない正座でしびれた足がじんじん痛む。扇風機はぶうんとまぬけな羽音をたてながらぬるい空気をかきまぜていて、外ではミンミンゼミがかしましく鳴いていた。
あまりの暑さにくらくらした。
夏休み。今年はじいちゃんの初盆なので、祥太は両親と一緒に田舎にやってきた。
仲の良いいとこの真紀や信一も来ている。真紀は祥太よりひとつ年下の四年生。信一は今年中学にあがったばかり。お正月に会ったときより背が伸びているようだ。
お坊さんが帰り、大人たちはあわただしく宴会の準備をはじめた。
祥太たち子どもは居間にひっこんでだらりと伸びていた。
「あちいー。なんでこの家はクーラーがないんだよ」
信一が恨めしげにつぶやく。
「あー。あれ食いてえな。かき氷。じいちゃんの作ったやつ」
うつむいてゲームをいじっていた真紀が顔をあげた。
「あたしも食べたいー。ふわっふわなんだよね。じいちゃんのは、とくべつ」
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