短冊に想いをこめて

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短冊に想いをこめて

 細く細く煙が上っていく。  あいにくの曇り空。雨は降っていない。  風に煽られて、ふらふらと揺れる煙は、それでも一心に空を目指す。  パチパチと聴こえてきそうなほどに赤々とした炎に、色とりどりの短冊が飲まれていく。  曇り空に溶けて消えていく煙を窓から見上げた。  七夕の笹送り。笹をお焚き上げして神様に届けるんだ、という説明を聞いた時、なんてロマンチストな、と思った。  叶えてほしい願い事ほど神様は知らんぷりする。  それでも、ロマンチックに願かけをしたくはなった。  晴れた空に煙が届いたら、会いに行ってもいいかも。  空は繋がっているから。  バカみたい、とは思っても、一度思いつくと笹送りの日の天気を毎日確認した。 「曇りのことは考えてなかったなあ」  昨日までの天気予報は、晴れ。曇り空に煙は上る。神様は、願かけさえも許してくれない。                    ***  引っ越しが決まったのは、高3の春だった。 「っりえないでしょ! 私、受験生だよ?」     
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