短冊に想いをこめて

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 春季講習の自習室。おしゃべり禁止。でも、話さずにはいられない。周りも、受験モードというよりは、とりあえずお勉強しに来ましたモードでザワザワしてる。最近だと、もうすぐ始まる学校とクラス替えが話題だろう。 「うえー、まじか。急だね。でも、引っ越し、まだ先なんでしょ?」  ナツミがチョコを頬張る。飲食も禁止。蓋つきの飲み物のみ可。 「6月。お父さんはもっと前に行ってるけど、家、探したりとかあるから」 「私はいいけどねー。どうせ、大学で分かれるのわかってたし。でもねー、6月かあ」 「ちょっとは悲しんで」というツッコミはキレイにスルーされる。正直なところ、心配はしていない。スマホもネットもあるし、いつでも連絡は取れる。電話をすれば、距離なんてあんまり関係ない。でも。ナツミが声をひそめる。 「あんた、ラインすら知らないんでしょ?」  連絡手段がなかったら、終わり。 「あ」というナツミの声と背中への重みを感じたのは同時だった。 「おまえら、うるせーっての」  吐息が耳にかかる。ブワッと全身に血が巡る。 「ちょ、ちょ、重い!」 「俺ら、じしゅーしてるんですけどー。おしゃべりならよそでやってくれませんかー?」  Yシャツ越しに体温を感じる。無理。体の奥の方の熱が顔まで上がってくる。かなり無理。 「外はまだ寒いしー、カフェとか高いしー」 「てか、じゅんぺー! どいて!」     
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