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体が軽くなる。顔を俯けたままでいると、ニヤニヤしている純平に覗き込まれた。
「赤くなっちゃって。かーわいいのー」
ヤバい。思わず俯く。でも、きっとバレバレ。これでもかっていうほど赤くなる顔色は、いつも制御できない。
「あんた、それセクハラだからね」
「え?」と大仰な驚き方が白々しい。遠ざかっていた体をまた背中に押しつけて来る。
「相手が嫌がってたらそうだけどー。ねえ、ユリコちゃーん」
静まれ! 私の赤い顔!
「しらない!」
嫌だ、と言えない自分が悲しい。
もうこれ以上は無理だ。
「ナツミ、行こう。たしかに迷惑だし。あっちで話そう」
純平を振り払って、カバンを持つと、ナツミの手を引っ張って席を立った。
「じゃあねー」
手をヒラヒラさせる純平をにらむ。
ムカつく。ムカつくのに。
「ちょっと、ちょっとー。純平に話さなくていいわけ?」
「いいよ、どうせ気にしないでしょ」
「あーあ、拗ねちゃって。良いことないよ」
わかってる。わかってるけれど、そんなにうまくできない。
「クラス替えだって一緒になるかわかんないよ。春季講習終わったら、塾で会えるのも減るしさあ。どうするのー?」
「わかってる!」
ナツミが肩を竦めた。
わかってる、わかってる、わかってる。
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