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01:出発
着替えと……タオルと……飲み物は買えばいいか、あと必要なものは……。急がなきゃあいつが来ちゃうぞ……。
「奏音ー!準備まだー??」
やべっ、弥生(やよい)のやつもう着いたのか!?
俺の家の外で早くー、遅いよー、とか何とか言ってる声が聞こえる。……近所迷惑だからやめてほしい。
俺は残りの荷物を全てリュックに押し込んで急いで家を出た。
家を出る前に、母の遺影に挨拶するのを忘れない。
……いってくるね。彼を見つけに。
ガチャ、と玄関の戸を開けるのと同時に
「おそーい!!!」
と弥生の声。今日も綺麗な金髪と青眼をキラキラ輝かせてくれる。
「お前の準備が早いんだよ」
俺と弥生は隣の家同士。
けれど、ずっと仲が良かった訳ではない。
俺は、幼い頃に母が死んでからというもの、誰とも関わらずに生きてきたし、弥生は弥生で女っぽい名前と顔のおかげでからかわれてきた。
勇気を出して、いじめられていた弥生を助けてあげたあの日から仲良くなったんだっけな……。
今ではこんなイケメンになりやがって……。
……世の中って不公平だな。
「まーた、僕の事イケメンだなぁって思ってたでしょ???」
弥生は俺の顔をつんつんしながらキラキラした顔を向けてくる。
…うっ、そんな眩しい顔で俺を見ないでくれ。
「イケメンなことに変わりはないだろ。
俺にもその顔面偏差値分けてくれよ」
「何言ってんのー、奏音も十分イケメンなくせにー」
「へっ、よく言うぜ……っとそろそろ行こう!
船に乗り遅れる!」
「元はといえば奏音が遅かったんでしょー」
「はいはい、すみませんでしたー」
その後も他愛ない話が続く中、俺と弥生は船乗り場を目指した。
この何もない街から抜け出すために。
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