2人が本棚に入れています
本棚に追加
そうして、俺らは彼女から指輪を受け取った。
中央に蒼い石のついた、少し古いが綺麗な指輪だ。
「お守り代わりにつけていきなよ。そっちの全然喋らないあなたが、付けていくといいわ」
「えっ、俺が?」
「じゃあお前がリーダーってことで」
弥生は俺に全ての責任を背負わせ、一人軽々笑顔でお姉さんに別れを告げていた。
すると船の汽笛が鳴った。
そろそろ出発の時が来たみたいだ。
俺は、指輪を一番フィットした人差し指につけて、お姉さんに感謝を伝えると船に乗り込んだ。
弥生はお姉さんとの別れを惜しんでいたが、俺が引っ張って船に乗せた。
船はマジア島経由セントラルサン島行きだ。
乗客はかなり少ないが、作りは豪華な広い船の上で、俺は旅の始まりを感じた。
やがて出航した船から、海風を感じながら、遠ざかっていく俺らの街を眺めた。
やっと、この退屈な街から抜け出せたんだ。
「やっとだな……」
同じことを思ったのか、隣にいた弥生も街を見つめて呟く。
魔法使いを、探す旅。
俺らの存在意義を見つける旅。
退屈と理不尽を壊す旅。
目的はお互い違うかもしれない。
けれど今、俺らはマジア島への期待を胸に、高揚した気持ちを抑えきれないでいるのだった。
★★★★★★★★
汽笛をあげて遠ざかる船を、受付の窓越しに見送っていた。
彼ら二人を乗せ、マジア島へと向かう船……。
「マジア島で待ってる」
そう独り言を呟き、私は、綺麗なお姉さんだった見た目を、普段の青年の姿に戻す。
「やはりこの体が一番動きやすいな。
お姉さんの体も良いものだったが……。
……おっと、さっきから独り言がずいぶん過ぎるな。
ははは、私も歳をとったものだ」
そう言って苦笑した。
魔法使いは年を重ねても年齢は変わらないのだが。
彼らが来るなら、先回りしてアイスを作っておかないとだなぁ。
そう思った私は、魔法の力で鳥になり、この何もない街から飛び立った。
彼らを乗せた船を、横目に。
最初のコメントを投稿しよう!