01:出発

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そうして、俺らは彼女から指輪を受け取った。 中央に蒼い石のついた、少し古いが綺麗な指輪だ。 「お守り代わりにつけていきなよ。そっちの全然喋らないあなたが、付けていくといいわ」 「えっ、俺が?」 「じゃあお前がリーダーってことで」 弥生は俺に全ての責任を背負わせ、一人軽々笑顔でお姉さんに別れを告げていた。 すると船の汽笛が鳴った。 そろそろ出発の時が来たみたいだ。 俺は、指輪を一番フィットした人差し指につけて、お姉さんに感謝を伝えると船に乗り込んだ。 弥生はお姉さんとの別れを惜しんでいたが、俺が引っ張って船に乗せた。 船はマジア島経由セントラルサン島行きだ。 乗客はかなり少ないが、作りは豪華な広い船の上で、俺は旅の始まりを感じた。 やがて出航した船から、海風を感じながら、遠ざかっていく俺らの街を眺めた。 やっと、この退屈な街から抜け出せたんだ。 「やっとだな……」 同じことを思ったのか、隣にいた弥生も街を見つめて呟く。 魔法使いを、探す旅。 俺らの存在意義を見つける旅。 退屈と理不尽を壊す旅。 目的はお互い違うかもしれない。 けれど今、俺らはマジア島への期待を胸に、高揚した気持ちを抑えきれないでいるのだった。 ★★★★★★★★ 汽笛をあげて遠ざかる船を、受付の窓越しに見送っていた。 彼ら二人を乗せ、マジア島へと向かう船……。 「マジア島で待ってる」 そう独り言を呟き、私は、綺麗なお姉さんだった見た目を、普段の青年の姿に戻す。 「やはりこの体が一番動きやすいな。 お姉さんの体も良いものだったが……。 ……おっと、さっきから独り言がずいぶん過ぎるな。 ははは、私も歳をとったものだ」 そう言って苦笑した。 魔法使いは年を重ねても年齢は変わらないのだが。 彼らが来るなら、先回りしてアイスを作っておかないとだなぁ。 そう思った私は、魔法の力で鳥になり、この何もない街から飛び立った。 彼らを乗せた船を、横目に。
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