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「うわ!!美味しそう!!」
この船の食事は、船だけに毎食バイキングだ。
和洋食混合の様々な主食やおかずが沢山並べられていた。
「おっと、お客さん。
12時までもう少しあります、今少しお待ちください」
がたいのいいコックが俺らの前に立ちはだかり、食堂への入り口を塞ぐ。
……ちょっとくらいいいじゃないか。
まぁこんな強そうな相手にそんなことも言えないが。
俺らが渋々食堂から離れようとしたとき後ろから声が割り込んできた。
「まぁまぁ少しくらいいいじゃないか。
この船にはこんなに大量の食事を平らげられるほどの客も乗ってない。それなら、この若造達に沢山食べてもらうのが食物の幸せってものじゃないかな?」
「せ、船長……ですけど時間は守らないと……」
「ほう?では、私が今ものすごく空腹で、一分一秒でも早く食事を取りたい、と言ったら君はここを開けてくれるのかい?」
「……船長が言うならば……どきましょう」
「ハッハッハ。時間に正確な君の性格も嫌いなわけではないのだがね、有り難く頂くよ」
そう言って俺らの後ろから船長は歩いてきた。
かなりの老人で優しそうな目をしている。よく見ると体つきはかなりいかつく……いかにも船長って感じの人だった。
船長は俺らより先に食堂へ入ると振り返り、ほれほれお主らも、とでも言うかのように俺らを手招きした。
俺と弥生は目をぱちくりさせ、食堂へと入った。
……怖そうな顔のコックの前は少し早足で通り抜けたのはここだけの秘密だ。
「ほんっとに、あの人には敵いませんわ」
コックはそう言って苦笑いをし、調理室へと戻っていくのを見逃さなかった。
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