2068年7月

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「ああ、ここにしよう。そしてこの子を立派に育てよう」 夫は私のお腹を撫でた。 佐藤はそんな二人をじっと見つめていた。 「では、ご参加、ということでいいですね」 「はい」 佐藤は笑みを深めた。野崎は私たちの前に資料を置いた。 「それでは、こちらの書類によく目を通し、サインをお願いします」 同意書 1、本プログラム、及び研究所、その他一切の事柄について第三者に伝えることを禁ずる (守れなかった場合、記憶の消去後、精神病院へ入院、逮捕、殺害のいずれかが行われます) 2、理想のお子様像、ご両親の性格などの個人情報、クローンの成長過程、プログラム内容を研究で使うことを許可する (なお、実験で使われたクローンは実験終了後処分することを約束する) 3、例えクローンが理想のお子様像のように育ったとしても、お子様が外的環境(ご両親以外の人間、社会環境、テレビなど)の影響で理想のお子様像と誤差が生じる場合を承諾する (なるべく誤差をなくすため、お子様に良い影響、悪い影響を与えるものを伝える) 例:どのような性格の人間が近くにいたらいいか、悪いか。具体的な名前をあげた本やテレビ番組の紹介など 4、プログラム内で行った授業内容、問題時の対処方法などはデータで全てご両親に渡すことを約束する 5、全プログラムが終了した段階でこちらへの連絡は不可能となる (こちらからお子様の状況調査のため連絡する可能性はあり) 以上を承諾します 名前____________________________ 「おい、殺害ってなんだ」 「国が行っていることとはいえ、まだ表向きには承認されていません。今は試験段階であなた方や他の参加者の結果で承認されるかが決まってきます。ご安心ください、話さなければいいんです、誰にも」 まただ、佐藤の笑みが深くなった。少しこの笑顔が苦手だ。 「念のため言っておきますが、これは国が行っているものです。プログラムを見てわかるように、国民がまだ知らない技術も国は持っています。くれぐれも、ばれないなどと思わないでください。あなたが私どものやっていることを誰かの記憶だろうと、何かの記録だろうと、残した時点でわかります。わかる手段を私たちは持っています。酔った際などは特にお気を付けください」 「…わかった」 夫は佐藤の気迫に黙った。
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