2068年7月

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「それでは、どうしますか?もう今日からクローンと過ごしますか?」 「今日からもう、できるんですか?」 「ええ、ご都合が合うなら。クローンは2時間ほどで完成し、そこから始めたい年齢まで成長させるのでも数時間あればもうプログラムは開始できますよ」 私が10か月お腹を痛めて産む子はたった数時間で作ることができるのか。 「妊娠が進めば来るのも難しくなる。早いうちからやっておいた方がいいだろう。お願いします」 「かしこまりました。ではクローンを作るために別室へどうぞ」 私は佐藤について行った。 「こちらの服に着替え、機械にお入りください」 「はい」 病院服に着替え、日焼けマシーンみたいなものに入る。 佐藤がスイッチを入れたようだ、機械が動き出した。 数分だろうか、音が止まった。 「奥様、終わりました。では旦那様の元へ戻りましょう」 「はい」 私は少し首をかしげながらも着替え、元の部屋へ戻った。 「どうだった?」 「え?」 「どんな感じだったんだ」 「それが、私もよくわからないの。ただ機械に入っていただけみたいな」 夫の眉間に皺がよる。 「おい、本当にクローンを作れるのか?さっき見たやつも実は人形とかいう落ちじゃないだろうな」 「完成した後にDNA鑑定もできますが」 「いいじゃない、そんなのしなくても」 「そうか?」 もう信用した、それでいいじゃないか。 「それでは、何歳から育てましょう。プログラムの期間はお子様が生まれるまでの間です。あんまり遅くなりますと奥様がこちらに来るの難しくなると思われます」 「確かにそうだな。クローンを育てに来て自分たちの子に何かあったら元も子もない」 「こちらには何度でも来てくださって構いません。他のお客様ですと何歳のときを育てたいかで回数を決める方もいます」 例えクローンでも我が子同然。頻繁に会ってずっと育てたい気もしてしまう。
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