2068年7月

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「では実際にクローンに会ってみましょう」 佐藤たちの後に続き部屋を出た。 部屋の中央でボールで遊ぶ男の子がいる部屋の前に来た。 「あちらがお子様のクローンになります」 「あれが…俺たちの、子」 夫は噛み締めるように言った。私もガラスの中の子に釘付けになっていた。 「…可愛いね。…幸せにしないとね」 「ああ」 自然と私は涙を流していた。夫は中に入ろうとしたが、野崎がドアの前に立ち、入れなかった。 「なんだ?」 「失礼、入室前に注意事項がございます。1つ、あちらがクローンということを忘れないでください。2つ目、理想の子にするため、名前が必要となります。しかし、くれぐれもお子様と同じお名前はつけないでくださいね。…では、お入りください」 そう言うと佐藤は野崎に退けるよう指示した。 「あの、どうして同じ名前をつけたらダメなんですか?データを取るためには名前が同じ方がより正確になるんじゃ…?」 「ええ、奥様の言う通りです。私どもも少し前まではそうしておりました。ですが、ある1組の夫婦が同じ名前にしたところ、クローンの顔がちらつく、クローンと同じように接したのに少しでも反応が違うと嫌になる…など、ご両親の方に少し問題が生じるんです」 「ですので同じ名前をつけず、少し別人と思いながら育ててください」 野崎はドアを開けた。私たちはおそるおそる部屋に入った。 「まあ、そのご家族は虐待、離婚、自殺しましたけどね」 「佐藤さん!」 「いいでしょ、聞こえないんだから。…結局名前変えても比べる親は比べるのよね」 佐藤は伸びをしながら去っていった。野崎はガラスの中をじっと見つめ、佐藤の後を追った。
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