2068年7月

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2068年7月10日 インターホンが鳴った。画面には二人組の男女が映っている。 「はーい」 「すみません、私どもは教育心理、子育て支援会の者です。病院から説明されてますよね?」 確かにそういう人が来る、ようなことを言われた気がする。 とりあえずこの人達を家に上げることにした。 「奥様、このたびは妊娠おめでとうございます」 「え、ええ。ありがとうございます」 ソファに座りながら深々と頭を下げるためこちらもかしこまってしまう。 「私、教育心理学を研究しております、佐藤と申します」 「僕は佐藤の助手の野崎です」 二人が名刺を差し出してきたため受け取った。 「ど、どうも」 「今回が初めてのご出産ということで、どうですか、子育てとか不安に思われていませんか?」 「そりゃあ、不安ですけど」 野崎は鞄をごそごそと探っている。 「そうですよねーちゃんと思い通りの子に育てられるか、育て方を間違わないか、不安ですよねー。今の時代、何か問題を起こせばすぐ育て方、親が悪いなど言われます。小さいころの育て方がお子様、ご両親の人生を大きく変えるんですよ」 「はぁ」 佐藤はそう言い、野崎の方に視線を向けず手を差し出す。野崎は鞄から渡した資料を佐藤に渡した。 「そこでですね、現在国で一部の初めて出産なされる方向けに子育て支援プログラムというのを行っていまして」 佐藤から貰った資料に目を通す。なんか、怪しそうだ。 「今、怪しそうと思いましたね」 「え!?」 「奥様、その気持ちも十分わかります。ですが、国が行っているもののため、お金は一切かかりません」 「無料、ですか…」 資料に目を通してみる。子育ての疑似体験…? 「具体的には、私どもの研究所で、お子様のクローンを作り、VRでご自宅を再現、教育心理学のプロの指導の下、理想のお子様を育てる体験が出来る、ということになります」 「子育て、失敗したくはないでしょう?」 2人はニヤァと笑った。確かに、失敗はしたくない。私たちの子だもの、幸せになってほしい。
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