2068年7月

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机に座り勉強している子とその傍らに立つ大人の女性。 「野崎、音声入れて」 「はい」 野崎はタブレットでを操作する。 「ありがとう、勉強頑張ってくれたのね。私はとっても嬉しいわ」 「うん、これくらい簡単だったよ」 「あなたがこんなにいい子で、出会えた私は運がいいわね」 私たちは外の窓からそれを見る。 「この部屋はマジックミラーとなっておりまして、こちらの姿は見えません。どうぞ、お近くでご覧ください。野崎!」 野崎は急いでタブレットを操作する。 「はい、こちらはーですね、ええっと…ああ、ご両親は自発的な子を望んでおりまして、今日は木島先生が担当ですね。今やっているのはアドラー心理学のアイメッセージ、ユーメッセージですね」 「偏りがないように担当は毎回変えます。ご両親が担当を決めたり、お子様との相性を考慮したりすることもございます」 「へー」 夫の目が輝いている。たぶん、私も。凄い、さすが国の研究所といったところだろうか。 「研究所の紹介は以上となります。では、応接室へどうぞ」 私たち夫婦と佐藤たちは向かい合わせに座った。 「どうです?研究所を見てみて」 「凄い設備ですね」 「国が行っているプログラムですからね。ご家族のためであるのと同時に、国のためでもありますから」 白衣の女性が入ってきてお茶を配った。夫はお茶を啜る。 「国のためとは?」 「ゆとり世代、さとり世代など子供は国に様々な育て方をされてきました。それゆえ自分が子供のときの育て方と、自分の子供の育て方が合わず心の病にかかるご両親も少なくはないんです」 「確かに、今はエゴイ世代でしたっけ?私たちのときはつくし世代なんて呼ばれていたのに」 「僕も一応つくし世代に入ります。他人に尽くしていた世代の次は急に利己主義世代なんて、もうどうしていいかわかりませんよね」 んんっ佐藤は咳払いをして野崎の言葉を止める。 「先ほど申し上げたように、悩む親御さんを少なくし国民を守るためと、人間の研究のためですかね。人間の感情や思考を研究し、商品や教育に役立てていくのです」 「なるほど」 「ねぇ、あなた。私、やっぱりこれに参加したいわ。不安な子育てもここなら」 私は夫の服をつまんだ。夫は私の手を両手で包んだ。
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