終わりの夏に

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だんだん日が傾き、西側の空が赤みを帯び始めた頃。 見渡しの良い川沿いの道を、一人の男性が歩いて来た。手を振り、子ども達に大声で呼びかける。 「おーい、もう暗くなるぞ!そろそろ帰ろう」 男性の明るい声に、子ども達はいつも通り、はぁーいと返事をする。その返事を聞いて、男性は穏やかな笑みを浮かべながら、こちらへやって来る。 私はその男性───いや、その憎い男をこれでもかという程、睨み付けた。 あの薄っぺらい笑顔、引きずるような歩き方。声だってあの頃と比べると随分低くなってはいるが、ザラザラとしたまとわりつくような声質は未だに変わっていない。 全部、全部、片時も忘れたことはない。私が憎み続けてきたもの。ずっとずっと、私を苦しめ続けてきたもの。 「あとちょっとだけ泳いだら帰るからー!」 男を睨み続ける私とは対照的に、あの子どもは笑顔で男に向かって叫んだ。 「もうちょっと待ってよ、お父さーん!」 あの子どもの高い声が夕方の空に木霊する。息子の可愛い声を聞いた男は、仕方がないなぁと言わんばかりに眉を下げ、幸せそうな笑みを浮かべた。
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