終わりの夏に

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遠い遠い昔の話。水が嫌いで泳ぐのが苦手だった私は、むりやりこの川へ連れて来られた。私を連れて来た同級生の男子達は指導だのなんだのとほざいて、私を高台に上らせた。 そしてその内の一人───あの男が、私を川へと突き落とした。 パニックで溺れる私を嘲笑う声。五月蝿いくらいに鳴り響く蝉の声。鼻や口から入ってくる多量の水。霞んでいく視界。 苦しい、怖い、息が出来ない───。 冷たい水の中、私は最悪の気分で死を迎えた。 あの日からちょうど20年。今日という日に、あの子どもがちゃんとこの川へ来てくれた事に私は感謝したい。 やっと終わるんだ。 この醜い憎悪の気持ちを、終わらせられるんだ。
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