終わりの夏に

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友達と笑い合いながら、名残惜しそうに川で遊ぶあの子どもの足を、川底から確認する。 親という生き物にとって一番大事なものは、子どもなのだという。それはそれは自分の命をなげうってでも守りたいくらい、可愛くて愛しい存在だという。 そう。答えはもうとっくに出ている。 水中で揺れる小さな足に手を伸ばす。 ───こんなこと、本当はやりたくないんじゃないかって? そんな訳ないだろう。だって私を殺したあの男を地獄に叩き落とせるのだから。長い間、待ち続けたこの日が漸く訪れたのだから。 理不尽だなんてお互い様だ。 あの子の足をそっと掴む。 こんがりと日焼けした元気な足。希望のある未来を歩けるであろう足。 川のすぐ外からは笑い声が微かに響く。 無垢で何も知らない子ども達の声が。 ───わかってる、わかってるよ。 だけどもう引き返せない……。 足を掴む両手に力を込めると 私は固く目を瞑った。
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