第1話~導~

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いったいどこがゴールになるんだろうか。 生きていると、そう思うことが多々ある。 老衰で死ぬことなのか… はたまた、結婚することなのか… 或いは、生まれてきた時点でゴールなのか…… いくら考えても結論は導き出せなかった。あの時まではーーー ーーー既に、日は高く登り、キラキラした日差しが部屋へと注ぐ。 俺は、優しい声に起こされた。 「ーーー起きて、もうお昼になっちゃうよ」 と、俺の頭にポンと手を置き、微笑む女性。 寝ぼけ眼で、ふと外を見る。 ベッドの向こうの窓からは、お出かけ日和な爽やかな陽射し。 「あぁ、おはよ。悪い、寝過ごしちゃったな。今日、雨の日なのに」 すると、彼女はクスッと笑い 「そうだね、何回目の雨の日になるかな」 「8回目になるな」 「ついに8回目かぁ、すごいね」 と、感慨深げに。 「はは、そうだな。さ、支度するか」 「うん、そうだね!」 彼女は、うれしそうにキッチンへ。 2人で遅めの朝食をとり、俺は身支度をしながら、過去を回想する。 あれは、今から何年も前だ。 今、務めている会社の入社したての頃の話ーーー なんとか内定をもらい、就職活動を成功させた。 しかし、本当に入りたかった会社ではない。 周りが内定を掴み取っていく様子を目の当たりにし、焦りがあったことや、就職浪人の恐れから、決めたところだ。 辛いことに、大学のゼミの追い出しコンパでは、見事に、ほとんどのメンバーが立派な一流企業に内定を貰っていた。 しかし、自分なりに努力した結果として、この状況は受け止めていた。 とは言えども、まるで、みにくいアヒルの子のような気分であったことは、今でも鮮明に思い出せる。 どちらかというと、内定を貰えたところに就職を決めたというニュアンスが、強いのは否めない。 なぜなら、就職活動は、思ったより厳しく、なかなか思い描いたようにはいかなかったのだ。 入りたいと感じる会社からは何度となく選考で落とされていた。 そんな中、たまたま見つけた地元の企業。 そこから内定を、ようやっともらう事となった。 内定企業は零細のため、同級生から、度々、そこ大丈夫か?と、ふざけ半分にいじられていた。 自分の決めた道を進むのが立派だとフォローして貰う事があったっけ… 確固たる思いがあったわけではないので、慰めになっていないわけだが。 そんな地味な就職先で、まさかの事態が起こるとは予想だにしていなかったーーー
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