第1話~導~

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そして、時は流れ、きたる入社式当日ーーー 今日は午前中に入社式、午後に全体研修と聞いている。 もう1人、新入社員がいるらしい。 今日、初顔合わせとなるわけだ。 俺は、降りしきる雨の中、早めに家を出て、会社へ向かった。 なぜなら、この日は生憎、全国的な雨予報。 とりわけ、関東一円では、各地で大雨警報が発令、土砂災害や洪水などの警報も合わせて発令されていた。 今日これから降る予報の激しい雨は、夕方まで続くらしい。 参ったものだ…… 俺はわりと、大切な時に雨に降られるタイプなのだ。 たとえば、合格した大学の受験の時。 不合格だった第一希望の大学は、快晴の日に受験できたのに…… 次に、遠出の時。 小学生の頃、家族でと言うのではなく、合宿で遠征をしていた時だ。 息抜きに海で遊ぶことが許可された日だった。 張り切り海へ赴くも、遊び始めすぐ雲行きは怪しくなり…… あとは想像にお任せする。 ーーーそういえば、それだけでもなかった気がするが…なんだったか、何かあったんだが、記憶が曖昧ではっきり思い出せない。 まぁ、それはさておき、後は、大きな試合の当日など…… このように、ほとんどが程度こそ異なれ、雨天だったことは覚えている。 俺はいわゆる、世間一般で言うところの雨男、なのだろう。 そうこう思い巡らせながら、会社に着いた。 予定より早く着き、待機部屋へ案内された。 そこは小さな会議室。 既に1人、リクルートスーツの女性がいた。 俺は、軽く会釈をすると、彼女はにこりと笑い、椅子から立ち上がる。 彼女は俺と同じ新入社員で、部署はこれから発表があると言われた。 そして、2人になるーーー 三人がけのテーブルで、彼女とは椅子を一つ挟んで隣の、お茶の置かれた席に向かう。 「北見(きたみ) 菖蒲(あやめ)です。今日からよろしくお願いします」 と律儀に、丁寧な挨拶をしてくれた。 俺は改まって 「あ、神谷(かみたに) (ごう)です。よろしくお願いします。新入社員て2人みたいですね」 と苦笑いで。 すると、北見は少し驚き、一瞬だが、考えるような素振りを見せた。 「あ、2人って聞いてなかったりしましたか?」 「あ、いえ!なんでもありません。初めての場で緊張してるかも、あはは」 と、手を顔の前でふりながら。 俺が、ふと目をやった先には、北見の傘。 なぜか、見覚えがあるような気がしたーーー
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