第2話~邂逅~

3/3

5人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
遠くの空、雲が速く流れていく。まるで今までの時間の流れのようにーーー 俺は、さっきふと思い出したことを聞いてみることに。 「そういえば、最初会った時、言いかけてましたけど…北見さんは、地元は出身大学の方じゃないんでしたっけ?」 「あ、そうなんですよ。あの時、途切れちゃいましたもんね。私は、もともと東京にいたんです」 「そうなんですね、大学の関係で向こうへ?」 「いえ、子供の頃でした、向こうへ移り住んだのは。親の仕事の関係でした。本当は、そのまま地元で暮らしたかったんですけど…」 「子供の頃からだったんですね。それは大変でしたね」 「うーん、そうですねぇ、確かに不安なところはありましたし、慣れるまでは苦労ありました。あはは……」 思わず苦笑するが、すぐ明るい表情で 「ま!でも見知らぬ土地で一からというのも、今思い返せば良い経験だったのかもしれません」 (立派な考えを持つ人だなぁ) 俺は素直に感心しながら 「経験は、確かに大事ですよね」 北見は、おどけたように 「なので、私実家が関西になってしまったんですよ」 「ははは、俺なんて、ずっと地元から出てませんから。愛着もあり、地元に恩返しがしたいというのもありますけどーーー」 と、苦笑い。 すると、北見は強い風に吹かれた前髪を手櫛で整えながら、2、3秒考えるような素振りをする。 北見は、ふと我に返ったように 「恩返し、良いですね!」 (ーーー??なんだろうか今の間は…) と、気になりはしたが 「まぁ恩返しといっても何ができるのやら、ですけどね。模索中です」 ネクタイを少し緩めて、会話を続けた。 北見は、少し目を泳がせながら 「あ、えっと、私は地元がここなんです。だから、戻ってきたいなぁ…なんて思って、就職先探して、今に至ります」 「俺も地元ここですよ。結局、地元から出ずに終わりました、ははは」 すると、なぜか北見が神妙な顔つきとなった。 俺は不思議に思い 「あ、どうかしましたか?」 と尋ねると、ふと柔らかい表情に戻り 「いえ、すみません!ちょっと考え事してしまって!えへへ…」 北見は苦笑いをしながら話を続けた。 「あぁそうそう、私、一時期……」 北見の声のトーンが急に変わった。 「水泳を習ってたことがあるんですけど……もしかして神谷さんーーー」 俺は、そこで咄嗟に (水泳…傘…そうだ、傘の見覚えはーーー)
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加