第3話~回想~

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俺の脳裏に、ある過去の出来事が浮かんだ。 (そうだ、スイミングスクールで……) 「俺もやってまし…たね、スイミング通ってましたーーー」 言葉が、押し出されるように、 出て行く感覚を覚えた。 まるで、ところてんの如く。 俺の脳裏に浮かんだある記憶とは、中学時代のできごとーーー まさか、という気持ちが表情に出てたのかもしれない。 北見は察知したのか、間髪を入れずに 「あの、もしかして中学の時にーーー」 と、俺が尋ねようとした言葉を、先に口にした。 二、三拍挟み静寂の後 「嶺津(れいつ)スイミングスクールーーー!!」 と、2人同時に。 俺たちは、その場で歩みを止め、棒立ちとなってしまった。 開いた口が塞がらない、という状態に陥ったのは、これが生まれてはじめての経験である。 胸の鼓動は、高く飛び跳ねるように。 そして、数回強く胸の奥を打ち付けた。 唖然とする表情の俺から、かろうじて出た言葉は 「………かさーーー」 の一言だった。 それを聞いた北見は、開いた口に手を当て、深く頷くーーー 俺の頭で、走馬灯のように過去が蘇る。 そう、俺たちは既に出会っていた、子供の頃に。 遡ること、小学生から中学生の時だーーー 地元には有名な、スイミングスクールがあった。 嶺津(れいつ)スイミングスクールというところだ。 そこで、地元のクラブチームとして、小学生時代から、ほぼ毎日練習をしていた。 その甲斐あって、小学生の時、全国大会に出場し好成績を収めるなど、周りからはスターを見るような目で見られ、ちやほやされていた。 やがて、中学生になると、競技雑誌にも取り上げられた。 それは、まさに人生の最盛期のようだったーーー しかし、中学生の半ばあたりだろうか。 見事にスランプに陥ってしまった。 全国大会へ出場することはおろか、地方の予選すらなかなかに厳しい状況となっていた。 現実は甘くはない、という言葉があるが… これはまさに、体現したことのように思う。 こうして、俺は今までの結果からのプライドや、周囲の期待に対して、必要以上に大きなプレッシャーを背負いむこととなった。 それだけではない、手のひらを返したような態度の人間を見た俺は精神的にも疲弊し…… やがて、自暴自棄になっていった。 気づけば、周りの関係の無い人にまで、当たり散らすようになってしまっていたーーー
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