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「……どうする?」
そんなこと私に聞かれましても。
私は何と答えたらいいのかわからず、首を傾げた。
「君が廃部寸前のサークルでも入りたいと言ってくれるなら、彼の申し出を受けてみようと思うんだ」
私にそんな重大なことを押しつけますか? と思いつつ私は頭を悩ませる。
「……一応、入部希望ではありますけど、部長さんは本当にそれでいいんですか?」
事情を今しがた知った私からみても、彼が難色を示しているのは明らかだ。そう訪ねると苦笑いを浮かべながらその答えを提示した。
「廃部になるのはやっぱり嫌だからね。藁にでも縋ってみようとは考えていたんだ」
ただね…、と何かもの言いたげに口ごもる。
ここまで乗りかけた船なら、こちらとしては洗いざらい話して欲しい。そう伝えると、おそらく一番の懸念材料を口にした。
「……坂上くん、本物のモデルだからそこが、ね」
ーー本物のモデル?
たしかに近くで見た彼の顔はそこら辺にいる一般人よりもだいぶ整っていた。
すーっと通った鼻筋や、薄い唇から覗く白い歯と、少しキュートな八重歯。肌もきめ細かくて毛穴ひとつ無かった。
まさか現役のモデルだったとは…。
しかし、それならこれだけ難色を示すのには頷ける。
要は、所謂趣味の範疇ではなくなる、ということなのだろう。
本業は学生にしろ、相手が本物のモデルだとなると、プロを相手にしているわけで指摘が多くなることも目に見えている、というわけだ。
「じゃあ、他にもモデルの卵とやらがわんさかいるサークルなんですかね?」
「どうかなぁ…そこまではちょっと」
何よりまだ発足もされていないからね、と益若さんが苦笑いを浮かべた。
でも逆を言えば話題性は大きく、廃れそうになっているサークルにとっての確かな起爆剤となる。そして、さらに逆を言えば生半可な気持ちで入部してくる学生も増えるだろう。
そうなればのんびりと…なんて贅沢はいえなくなる。
「……それを踏まえてどうする? 相原さん」
私は何もモデルの撮影がしたくてサークルに入るわけではない。でも、私が入部しなければこの部長さんも困り、そしてこの由緒正しきサークルの存続は難しくなる。
過去の栄光という看板を背負うというのは大変な役目だと思った。
私は苦笑いを浮かべる部長さんに負けじと、困惑の表情を浮かべた。
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