序章 とある駅前での魔女

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 四月。新入学と新学期の季節。始まりの季節だ。  下旬に入り、桜はすでに散り初めており、花見はもうできない。  だいぶ暖かくなってきたせいか、道行く人々の足取りも軽やかだ。  晴れ渡った空に雲が流れ、心地よい穏やかな日差しが降り注ぐ。良い天気である。  赤城虎丸(あかぎとらまる)は、慣れない駅前通りで立ち読みしてから、改札に向かった。  小学校、中学校と私立の学校に通った。高校で初めて公立校に来たのだ。  普通は逆である。高校から私立というのが、よくあるパターンだ。  なぜ高校からわざわざ公立にしたかというと、私立では友達ができなかったからである。  身長182センチ。肩幅もがっりしている。体がデカイから暴力でイジメられはしなかったが。クラス中から無視された。悪意のある無視というよりは、無愛想なヤツなので近づかないでおこう、といったカンジだ。虎丸は人付き合いが苦手なのだ。
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