序章 とある駅前での魔女

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 べつに人間嫌いというわけではない。ただ、馴れ馴れしいベタベタした人間関係が嫌いなのだ。自分の私生活のことにズケズケ口出しされるとムッとなるし、趣味や性格のことでからかわれるとイラッとくる。スポーツや映画の話、つまり雑談ならいくらでもできるのだが。プライバシーを他人に干渉されると、つい仏頂面になってしまう。それで『気難しいヤツ』という位置づけにされてしまい、中学卒業までそのままだったのだ。  一人でいること自体は、あまり苦痛ではない。どちらかというと単独行動が好きなほうだ。しかし学校という場所は、集団行動を基本にした所である。そこにいる限り、常に集団に融け込むことを要求される。そうでない者は、とてつもなく居心地が悪いのだ。学校とはそういう仕組みになっている組織なのだ。そしてその居心地の悪さは、態度を変えない限りどんどん悪化していく。しかし、今まで無愛想で友達のいなかったヤツが、急に人気者にはなれない。多重人格じゃあるまいし。そこで学校を変えることにしたのだ。
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