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みなさん、俺と彼女の関係は友人でも同僚でも、ましてカレカノでもないんですよ。
…そんなこと思う人いないか。
芸能人でも納得する容姿の彼女と毛玉ができた褪せたパーカーをたらんと着てる俺とでは見るからにカーストが違う。
どう見えるかと言ったら、たとえば駅前で教材のキャッチセールスにひっかかった世間知らずの大学生と、やり手セールスレディ、みたいな?
そしてそれはだいたい正解です。
俺、安楽寺綾太郎は、今日、1週間ぶりに外出を試み、そして駅前で彼女に声をかけられた。
「こんにちは。君、今、死のうかなと思っているでしょう」
「…」
うわこの人、美人だししっかりしてそうでそんな感じしないのに、宗教かな。ヤバイ。
どん引きしている俺に、
「かなり真面目にそう検討したことがある、そうね」
彼女は続けた。
外に出たとたんこれだ。
食料がつき、断食も洒落にならないレベルになってきたので、しかたなく外に出た。
さっと食って、さっと買える食料を買って、さっと部屋に舞い戻る、その短い間に、
おかしな手合に目をつけられてしまう。
ああ、どうせ俺の人生ってそういう、すべてのハズレくじをうまく引くことの繰り返しなんだな。
いっそ、うっすら笑いたいような、諦観した気分で、俺はネットでたまに見るコスプレイヤーみたいなビジュアルの彼女をぼんやり見た。
しかし、俺は他人が見て丸わかりなほど、そこまで人生捨てたいオーラをだだ漏れさせているんだろうか…。
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