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 やがて医者がやって来て、まだ安心は出来ぬ。今が肝要な時ゆえとにかく当分は安静にしているようにと言って帰った。  安静も何も、体が動かないのだ。  左半身の感覚が失われているばかりではなく、もうこれだけのことで疲労しきったように、全身がだるくて重く、そして、ひどく眠かった。  医者は煎じ薬のような物を置いていったが、おみよが匙で飲ませようとしても、その大半は口の端からこぼれた。  水分は出来る限り摂らせた方が良いが、飲み下せないようなら無理に飲ませてはいけないと言われていたおみよは、泣きべそのような顔をした。  勇二郎は再びとろとろと眠り、そして時折目を覚ましたが、またどれほどの時が経ったのかは分からない。ただ、いつもおみよが傍らにいて、何やら念仏のような物を唱えながら、左の手足を撫でたりさすったりしてくれていた。  どうも陰気でかなわぬと思ったが、おみよはおみよなりに彼女が知る限りの神仏に祈っているらしく、それが自分のためかと思うと、苦情は言いにくい。むしろ、こんなことまでしなくても良いのだと言いたかったが、おみよの手の温もりが心地良くて、それもまた口には出せなかった。  夏だというのに左の手足が、まるで死人のように冷えているのだ。  確かに、半ば死んでいるのだと言って間違いはあるまい。
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