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「良がったでないの、そったらにおっきな声さ出せるようになって。だはんこいてねで(我儘言ってないで)ちゃんと飯食って、もっと力ば付けれ」
「うるさい! 粥ばかりすすっていて力など出るものか。大体、力を付けたところでどうなると言うのだ!」
「おら達さすれば、白粥はご馳走だど。食えば一杯力出る」
この時、こぼれた粥の方に意識が行っていたことは、否定出来ない。
風が通るし、外が見えた方が気が変わって良いだろうと、縁側近くに床を移し、脇息を置いて座らせていたのも仇となった。
「やめれ!」
おみよは、悲鳴を上げた。
何を思ったか勇二郎が、遮二無二立ち上がろうとしたのだ。
思うままにならぬ己の体に苛立って、勇二郎が無茶苦茶をしようとするのは今日に始まったことではないが、それにしても無謀だった。気合いで何とかなるようなことでは無い。
茶碗を放り出し、取りすがろうとしたが、間に合わなかった。
勇二郎は、縁側から庭へと転げ落ちた。
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