憂鬱

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  「どうした? 次、坂本」 「・・・あ、はい」 いつの間にか自分の番になっていた。読み上げようとするがどこから読めばいいか分からない。上の空で真剣に聞いていなかった・・・。とその時、前の席の生徒が、周りには気づかれないように教科書を軽く持ち上げて指さし、読むべき箇所を教えてくれる、友達の朋美だ。 私は小声で朋美に礼をいうと教えられた所を読み始めた。 「需要と供給について」~ 需要と供給のバランスは買う側の求める量と売る側の売りたい量のバランスにによって・・・。   「さっきは助かったよ~ありがとね」  憂鬱な授業が終わり、先生が教室から出るのを確認してから、机に上半身を寝そべらせながら、助け船をだしてくれた親友に感謝を伝えた。 「いいの、いいの」 彼女は後ろの席の夢希に向き直ると微笑みながら顔の前で軽く手のひらをふった。  「でも珍しいね、夢希が授業中にぼーっとするなんて」 「そう?」 「ちょっと意外かも」 「なんか集中できなくて、少し外見てただけだよ・・・」  実際、男子にふざけて《ガリ勉》とからかわれるような私でも、ぼーとする事くらいある、いつもはそれとバレないように、タイミングを合わせて授業に注意を戻すのだ。さっきのは失敗したけど。そして、近頃授業に身が入っていないのも事実だった。 「もしかして、進路の事とか?」 「うっ」  悩みの種をズバリ言い当てられて、夢希は短く唸った。たしかに悩んでいた。早いもので高校生活ももう三年目となり、担任の先生は進路について、真剣に考えるように言ってくる。しかし夢希には特になりたいものもなかった。かといって就職というのも気が乗らなかった。進学を考えてはいるがそれには大きな障害があり、そのことで気が滅入っていたのだった。
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