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「お兄ちゃぁああん」
突如、部屋のドアを叩く不快音がヘッドフォンをしている裕也にまで届いた。中学二年になる妹、高梨李凛は、母親に言われ裕也を呼びに来たのだった。
「っるせぇな、今、忙しいんだよ!」
チャット機能をオフにすると、裕也は片耳だけヘッドフォンを上げて、ドアに向かい叫んだ。
「開ーけーなーよ! お母さんが呼んでるよ!」
李凛はドアノブをもぎ取ろうとせんばかりに力一杯ドアを開けようとしている。耐えかねた裕也はコントローラーを置いてドアを開けた。
「お、お母さんが、すぐ来いって」
李凛を突き飛ばし、階段を下りて母親のいるリビングへ向かう裕也。衝撃で壁にぶつかった李凛のスマホが落ちて画面が割れる。彼女はそれをジッと見つめていた。下から言い争いが聞こえる。それもそのはず、母親が呼び出した理由は、学校からの電話だったからだ。
昼間パートで家にいない母親は、裕也が学校を休んでいる事をその電話で知った。
ヒビの入ったスマホを握りしめた李凛は大きな足音を立てながらゆっくりとリビングへ向かった。
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