それは、知らない間に

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「お兄ちゃん! これっ!」 「あんた、何で学校休んでるの!」 「うるっせーなー! そんな事でいちいち呼ぶんじゃねぇよ!」  走って自室に戻る裕也に母親と李凛が呼び止める為の声をあげるが、無視して階段を登り、部屋の鍵をかける。裕也がバーチャルのキャラクターに移り変わる瞬間だった。 「この中の俺は自由でいられる、これこそが本当の自分だ」 ナユタ:リアル世界、お疲れ  裕也の抜けている間、フィールド上で待っていた狩仲間が迎えてくれる。首と肩をぐるっと回して、ゲームに没頭する。外からはゲームを阻止せんとばかりに大声で裕也を呼ぶ声が響くが、画面に表示されたスピーカーのレベルは最大まで引き上げられた。  裕也の分身は本当に強かった。向かう場所敵なしだった、リアルの世界で積もったイライラが更に彼を強くした。やがて現れる魔王とノーダメージで戦闘する。 ユウヤ:まあ、余裕ですね ナユタ:油断大敵ですぞ  手玉をとるように魔王を翻弄しながら攻撃を繰り返す。  次の瞬間、母親が家中のブレーカーを落とした。一瞬で画面が消え、裕也は現実世界に引き戻された。パソコンデスクを激しく叩く裕也、しばらくすると電源が元に戻った。
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