imitation

それは、知らない間に

　慌ててパソコンの電源を入れ、【I.N.S】を立ち上げる、画面一面に大きな文字で【you dead】と映し出されていた。血塗られた文字は液体が垂れるように消えていく。チャットの文字だけが、戦闘の変化を実況したようだった。

「俺は......死んだのか」

　項垂れるように机に突っ伏した裕也、このゲームは一度でも死ぬとまた始めからやり直しというリアルさ故のペナルティーがあった。

　チャット仲間も消えてしまい、文字通り生まれ変わるという訳だ。先ずは母親に猛抗議しに行くかと思いきや、裕也は母親を目の前にして謝った。

「バーチャルの中の自分が生まれ変わったのだからリアルの世界の俺も、生まれ変わるよ、学校も明日から行くから」

　母親には意味のわからない謝り方だったが、明日から学校に行くという言葉を聞いて安心した。
　妹には新しいガラスフィルムを買ってやると、約束をして和解した。

ナユタ：さあ、友よ、また立ち上がろうぞ

　チャット画面に一言だけ現れたのは、今までずっと一緒に狩りをしていたナユタだった、何故、裕也を探し出し繋がったのかは、分からないが、一人で魔王の相手をした彼もまた、一からやり直しだった。

　数時間後、家族で夕飯を済ませて、部屋に戻る裕也、パソコン画面がつけっぱなしになっていた事に気づいて、消そうとした瞬間、動きが止まる。二秒くらいすると食い入るようにパソコンへ向かった。