第1章

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第1章

出会いなんてほぼ無い。 車で一時間程走れば、拓けた街があり国宝級の城だってある。 そんな中途半端な田舎に住む農家の長男、清田 秀(きよた しゅう)は、都心でサラリーマンを5年過ごし、親父が亡くなったことを機にこの地に舞い戻った。 母は父が亡くなる二年前に他界し、学生時代に少しばかり手伝った農業を継いだ。 農業は嫌いじゃない。幼い頃は祖父や祖母、家族総出で手伝っていた。長く子供を授からなかった両親は待望の男子の誕生に、大切に或いは厳しく総体的には甘やかされて育って大きくなった。 たった1人で田舎の豪邸に住むことになり、帰郷すぐは中々慣れないものもあったが、今では悠々自適に暮らしている。 家族が遺してくれた遺産に何不自由なく、手探りながらも農家を営んでいる。 別に…働かなくても質素にさえすれば当分の生活費は十二分にある。だが、農地を遊ばせていても税金はかかるし遊ぶ場所さえままならないこの場所で腐っていく程落ちぶれてはいなかった。
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