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ハザードランプの明かりが、すりガラス越しに怪しく点滅している。
そのタクシーからひとりの男が降りてきた。まだ若い男だ。
男はフードを深くかぶり、うつむきながら玄関を抜け二人の方へ歩いてくる。
「誰だ?お前、勝手に入ってくんな!」
省吾が吠えるのを男はチラリと見た後、また視線を落とした。
「おい!聞いてんのか?」
角倉は片手で省吾を制すると、男に話しかけた。
「すまんな遠野くん。来てくれたか」
男は明らかに挙動不審だった。新人にありがちな空回りが目立つ省吾じゃなくとも、その男に警戒心を抱くには十分な情緒不安定さが伝わってくる。
「え、ええ……よ、呼ばれましたから……」
「あ、ああ~悪かった悪かった」
「いえ……で?……死体は?」
無愛想なその男……遠野宗介(とうのそうすけ)は『死体』について尋ねた。
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