あいつを好きなお前、好きを偽る私

5/16
前へ
/16ページ
次へ
 コンビニに着くと客の出入りを知らせるメロディーが鳴り、ひんやりとした冷房の風に迎えられる。竜一は目当てのアイスの前に雑誌コーナーに寄ると、今一番見たくない男がそこにいた。 (夏生……。ここでもお前を見せられるのか)  アニメ雑誌の表紙を飾っていた夏生の姿に、竜一はうんざりとした表情を隠すことなく(あらわ)にした。これ以上その姿を見ていたくなくて、雑誌コーナーから目的のアイスコーナーへ足早に移動する。 「これでいっか」  ソーダ味の棒アイスを手にレジへ行き、外へ出て店の前で食べ始める。シャク、シャクと軽い音を立てながら食べ進め、食べ終わった頃にはまた溜息を一つ。もう家に帰らなくてはならないからだ。この後のことを思うと気が重くなりながら、竜一は遅い足取りで帰路についた。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加