あいつを好きなお前、好きを偽る私

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(何で俺、ここにいるんだろう)  あれほどアニメの感想を聞かされるから嫌だと思っていたさくらの家に、今竜一はいる。  先程のコンビニでアイスを買ったとき、竜一は無意識にさくらの分のアイスも買っていたのだ。それに家へ向かっているときに気付き、渋々自分からさくらの家を訪ねたところ、喜んでアイスを受け取ったさくらはそのまま竜一を家に入れた。断って帰るつもりだった竜一も、どうせ後で話を聞かされるのだからさっさと先に聞いてしまおうと、それを受ける。  リビングに通され、テレビの前にあるソファーに座ると、さくらが一人分のグレープジュースをグラスに注いで持ってくる。グラスが一人分なのは、さくらはアイスを食べるからジュースは飲まないという理由らしい。  目の前のガラステーブルに置かれた僅かに水滴のついたグラスを手に持ち、竜一は静かに口をつける。果汁100パーセントらしいそれはとても濃い味なのに、すっきりと飲みやすい。甘さを口いっぱいに満たして潤すと、竜一は隣に座ったさくらに対し、重い口を開ける。
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