あいつを好きなお前、好きを偽る私

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「もし、もし夏生がほんとにいたら、お前は夏生を好きになるのか?」 「え?」 「俺と、俺とそっくりな顔した夏生がいたら、さくらは夏生の方を好きになるのかよっ!?」 「えっ、えっ? 竜一?」 「俺じゃ、夏生には勝てないのか?」  そう言って、竜一はグレープジュースをグラスに半分残したままソファーを立ち、鞄を持って部屋を出る。 「うわっ! びっくりした。竜くん来てたんだ」 「悪い、(いつき)。邪魔したな」  部屋のドアを開けたところでたった今帰ってきたばかりのさくらの弟、樹と出くわす。竜一は俯いたまま樹に視線を向けることもないまま、靴を履いてそのまま出ていってしまう。
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