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「これ、渡しておく」  私は人魚たちから預かったお守りを二つ、ミルロに渡す。 「駄目よ。対になるこれをわたしと勇者様にって思ってるんでしょ? 大婆様はわたしとベティちゃんにって渡したのよ?」 「お前という奴は……どこまで知ってるんだ」  ミルロは迷わずに赤い袋を手に取る。 「姫巫女の力を舐めないでちょうだい」 「はいはい、わかったよ」  私は青い袋を胸の中にしまい込む。 「対になる人魚の涙。一人の人魚から二粒の涙が出ることはないって言われていたわ。でも……」 「なんだよ」 「奇跡ってあると思わない?」  奇跡の二粒の涙。それはきっと命を守るだけではなく、もっと違う力を発揮してくれる。  ミルロがそう言うから、胸が熱くなった。泣きたくなった。  別れじゃない。だから泣くなと、自分を奮い立たせるだけで精一杯だ。 「またここに来てくれないか?」 「そうね。ベティちゃんが寂しがるから来てあげる」 「子供のくせに、上から物を言うんじゃない!」 「ごめーん」
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