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耳鳴りのようなものが私を襲う。ミルロの口は動いているのに、何も聞こえてはこなかった。
「人魚法……」
人魚法というものは簡単に認められるものではない。若い人魚を生け贄に、人間を不老不死にする。
人魚を殺し生き長らえることが、どれほどの苦痛を生むのか知らないはずがない。
人魚たちとは仲間としてこれまでも助け合いながら生きてきた。だからこそ、海賊は人魚法の存在自体に疑問を持っていた。
使うことなんて考えたこともない。
古い昔話という認識しかなかったから、おとぎ話の中に入り込んでしまったかのようで。
気分が悪い……。
まさか、本当にそれが適用される日が来るとは思わなかった。大法廷を納得させるだけの理由があったのだ。
それはつまり、誰かを不老不死にしなければ何かが終わる。今後に関わることだから。
「ベティちゃん!」
揺すられて、やっと耳が聞こえるようになった。
気がつけばミルロは親友の顔に戻っている。安心もしたが怖くもなった。
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