第1章  音楽準備室

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第1章  音楽準備室

 南向きの窓から、降り注ぐ太陽の光に起こされた隆は、枕もとの中国製の目覚まし時計を右手で掴むと、時刻を確かめた。学校に行くにはまだ時間がある。昨晩、友達とラインでチャットしたため、寝不足の頭をもう少し休めた方がいい。そう思いながら、目をつぶった。だが、再び眠ろうとすると、昨日、練習したヴァイオリンのフレーズが頭の中で延々と続き、二度寝をあきらめて起きることにした。布団から這い出ると、Tシャツの下はパンツ一枚であることに気が付き、慌てて履いていくジーパンを探した。カーテンレールに無造作にかけてある服の中から、目的のジーパンを発見すると、素早い動作でそれを履き、次に机横のタンスの中から、まともな靴下を探した。幸運にも、最初につかんだ靴下は新品同様だった。Tシャツはそれほど汗をかいていないことを確認して、満足して身支度を整えると、階下へ降りて行った。     
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