0人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
今日の仕事はきつかった。
お中元シーズンである今、私の職場は繁忙期である。
レジには大勢の人がギフトやら飲み物やらをカートに積んで大勢並ぶ。
「ちょっと店員さん!」「そこの店員さん!」「おい!早くしてくれよ!」
なんて言葉や怒号は毎日飛び交うがこうもひっきりなしに続くとさすがにくたびれる。
疲れたなあ、なんて肩を落としながら電車から降りてすぐ近くのコンビニに入る。
自分の店より少し高い缶ビールを2本とおつまみを買って時計を見るともう日をまたぎそうであった。
店が閉店してからも後片付けだなんだのと残業をしたせいである。
さっさと帰って明日に備えようと足を進める。
いつも通る道は遅い時間のせいで人通りが少ない。
それでも国道沿いだからかトラックややけにスピードを出した車は数える程度には走っている。
おっと、赤信号だ。
歩道の向こう側にいる人影も足を止めていた。
いけないことだが普段は車通りがなければ足を止めず歩道を渡ってしまう。
しかし人がいるとなると別だ、私も大人しく待つことにした。
左手には閉店したラーメン屋、横断歩道の向こう側に続く歩道には隣接した寿司屋。
真っ暗でここの店員さんももう家に帰ってるんだな、なんて羨ましく思った。
向こう側にいる人も仕事帰りなのだろうか。
お、青信号だ。
街にある建物はどれも黒く染まっていて街灯がぼんやりと道を照らしてくれる。
空は曇っていて月すらおぼろげだ。
空気は多少湿っていて今すぐにでもシャワーを浴びたい気分だ。
おっと、赤信号だ。
次こそ渡ってしまおうかと思ったがまたしても向こう側には人影が。
内心ため息をつきつつ、待つ事にする。
車道を挟んで右手には昔ダーツバーをしていた今はテナント募集中の張り紙をされている建物。
横断歩道の向こう側に続く歩道の右手は車道を挟んでなんだかよくわからない雑貨屋がある。
お前らも帰宅してるのか、と少し苛立った私は袋に入っている缶ビールを1本取り出しその場で空け、一口飲む。
あ、青に変わった。
今夜は暑い、深夜でもこんなに暑く感じるとは明日の昼は厳しくなりそうだ。
しかし代わりに今飲んでいるビールは美味い。
どこの店で買っても変わりのないビールだが暑い中仕事を終えて飲むビールは格別に美味しい。
おっと、赤信号だ。
最初のコメントを投稿しよう!