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そんな葵を見ながら
腰に両手を当てて『うんうん』と頷いた。
葵も梨果に
ニコリと微笑む。
その梨果越しに、ドアベルの音を響かせて
杏果が入ってくるのが見えた。
義理の兄である悠一と杏果は
一言二言、何やら話してから
葵のところに歩み寄ってきた。
「ごめんね、待った?」
「ううん、そんなことない。
今さっき来たばかりだよ」
葵がそう返事をしながら、杏果を見ると
さっきの厨房にいた男性が、湯気の上がる
オムライスを手に、歩いてくるのが見えた。
「ももちゃん、いらっしゃい」
男性はそう杏果を親し気に呼ぶと
目元を下げて微笑んだ。
「ど~も。ね、これって
たくちゃんの案なんでしょ?」
そう杏果が言うと
『たくちゃん』と呼ばれた男性は
頷いてから、こう言った。
「ここのクリームソースが一番好きなんだ。
だからそれと、俺の一番好きな
オムライスには、絶対合うと思って。はい、どうぞ」
二人の前に、オムライスと
エビフライが乗った皿が
テーブルに置かれた。
「ねぇ、たくちゃん!今、2回も
一番って言ったよ 笑」
「だって両方、一番なんだもん。
あ、でもエビフライは、オーナーの案だよ」
そんな楽し気な二人のやりとりを
葵はぼんやりと見つめていた。
すると『たくちゃん』と目が合った。
「こんばんは。葵ちゃんだったよね?」
名前を呼ばれると思っていなかった葵は
少し驚いた顔をして頷いた。
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