第一章 眉月 (まゆつき) ~成長~

3/7
前へ
/99ページ
次へ
 そんな葵を見ながら 腰に両手を当てて『うんうん』と頷いた。 葵も梨果に ニコリと微笑む。 その梨果越しに、ドアベルの音を響かせて 杏果が入ってくるのが見えた。 義理の兄である悠一と杏果は 一言二言、何やら話してから 葵のところに歩み寄ってきた。 「ごめんね、待った?」 「ううん、そんなことない。 今さっき来たばかりだよ」 葵がそう返事をしながら、杏果を見ると さっきの厨房にいた男性が、湯気の上がる オムライスを手に、歩いてくるのが見えた。 「ももちゃん、いらっしゃい」 男性はそう杏果を親し気に呼ぶと 目元を下げて微笑んだ。 「ど~も。ね、これって たくちゃんの案なんでしょ?」 そう杏果が言うと 『たくちゃん』と呼ばれた男性は 頷いてから、こう言った。 「ここのクリームソースが一番好きなんだ。 だからそれと、俺の一番好きな オムライスには、絶対合うと思って。はい、どうぞ」 二人の前に、オムライスと エビフライが乗った皿が テーブルに置かれた。 「ねぇ、たくちゃん!今、2回も 一番って言ったよ 笑」 「だって両方、一番なんだもん。 あ、でもエビフライは、オーナーの案だよ」 そんな楽し気な二人のやりとりを 葵はぼんやりと見つめていた。 すると『たくちゃん』と目が合った。 「こんばんは。葵ちゃんだったよね?」 名前を呼ばれると思っていなかった葵は 少し驚いた顔をして頷いた。     
/99ページ

最初のコメントを投稿しよう!

395人が本棚に入れています
本棚に追加