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食事を終えた葵は
『ティンカーベル』の入り口で
悠一にお礼をいうと、歩き出した。
杏果は、姉夫婦と一緒に帰るというので
1人で駅に向かう。
店から100メーターほど歩いたところで
T字路を右に曲がった。
そこには、少し大きめの公園があり
手前のベンチには、座る人影が見えた。
急ぎ足で、通り抜けようと思っていると
白い洋服の男性が、振り返る。
「あ・・・」
「あ・・・」
同時に
そう呟いた。
拓人が、休憩だったのか
公園で缶コーヒーを飲んでいた。
葵が、何か言わなくちゃと思っていると
拓人が先に、口を開いた。
「新メニューに決まったよ」
拓人は、立ち上がって
微笑んだ。
「ホント、美味しかったです」
「ランチから出してみるって」
拓人の切れ長の目元が
優しく弧を描く。
「オムライス、好きなんですね」
「あはは、子供みたいでしょ?」
照れたように笑う顔も可愛い
と葵は思った。
「葵ちゃんは、ももちゃんの
親友なんだって?」
「あ、はい。高校の同級生で。
杏果がそう言ってました?」
声が聞き取りにくいと感じた葵は
おもむろに、拓人の側に歩み寄る。
拓人は、自分が座っていたベンチに
葵を促した。
葵が、そのベンチに座ると
拓人も少し離れて
隣に座った。
「ももちゃんが『親友を連れて行く』
ってラインで」
「そっか、そう言ってましたね。
あ、たくちゃんは、お店にいつから?」
先ほど店にいた時に
みんなで話していたせいか
葵は、自然に拓人と話すことができた。
「一か月前、かな。俺
大学生のアルバイト」
「そうなんだ。じゃあ、夜だけ?」
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