真夜中の着信電話

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「……うっ……うぅ………」 電話の向こうから、微かに友人の声が聞こえる。 言葉を発する事のない(うめ)くような声だった。 (……泣いているのかな……?) 私は、不安になった。 言葉にならない声は、まるで……… 涙が止まらなくなり、しゃべる事も(まま)ならない嗚咽(おえつ)のように聞こえたからだ。 何か、伝えたい事があるのに、言葉にならない…… そんな様子だけが続く。 (ゆっくり話せば良いよ……落ち着いて話して……) 聞いているのは、留守電の音声だが、友人に直接語りかけるように、心の中で(つぶや)いた。 つい、2、3日前に会った時は元気そうだったのに……。 一体、何があったのか……? 一向に言葉を発する事はないまま、(うめ)き声のような声のみが繰り返される。 その声を聞きながら、私は奇妙な事に気付いた。 電話の直ぐ側で発する友人の声とは別に…… もっと、奥……友人の背後の辺りから、別の声が聞こえていたのだ。
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