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彬仁が叫び声をあげると、まるで停止ボタンを押した様に目の前の二人の動きが止まった。
「!?」
「さぁ、選択の時です」
エレベーター内にまた機械的な声が響く。
「あなたはこの場面に介入する事が出来ます。その代わり、一切の記憶と声を失います。また、このまま何もする事なく元の時間に戻る事も出来ます。その場合、記憶は残りますが、視覚、聴覚、嗅覚、そして手足の自由を失います」
「なんだと!!?」
「この世に対価が無いものはありません。あなたは時という強大なる力を求めました。そんな事も分からずにあの扉を開けてしまったのですか?」
「あ……」
ここに来て、やっと彬仁は自分が求めたものが、人為を超えた禁断のものであった事に気付かされる。
「さぁ、選択しなさい」
呆然と立ち尽くす彼を責め立てる様に、その台詞だけがエレベーター内に響き続けた。
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