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恋というのは、キラキラして美しいものだろうか?
砂糖菓子みたいにふわふわで、ショートケーキの苺みたいに甘酸っぱい?
花の高校二年生。王子様のような素敵な男子と巡り会い、時に切なく燃えるような……そんな女の子の憧れ?
あえて声を大にして言いたい。私はそうは思わない。
そんなのは誇大妄想で、幻想だ。
恋ってのは、もっとどろどろとした、底無し沼のようなもんだろう。
はまると抜け出せない。恐ろしいものじゃあないのか。
「ねえ、賢吾。あんたの好みのタイプってどんな子?」
夕暮れの河川敷、肩を並べて下校する学ランとセーラー服の男女が二人。
私は幼馴染みの横顔に問い掛けた。
「……? どうした響希、藪から棒に」
ぴくりと太い眉を上げた賢吾が、顎を引くようにして私を見下ろす。
私の背は百七十近く、並の男子よりもたっぱはあるのだが、百八十を超える賢吾には負ける。
「あんた、そこそこもてるくせに誰とも付き合ってないんでしょ。何か理由があるのかなって」
組んだ両手を後頭部に回して、私はぐっと伸びをするように胸を張った。
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