夏の日、湘南国道134号。

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 間接照明で暖かく照らされた店内には週末の夜ということも手伝って多くの人に賑わっている。店員は忙しなく注文を伺い走る。俺は一人の店員を捕まえ生ビールと肉の追加を頼んだ。 「適当に入ったけど案外美味いなここ、当たりだったわ」  そう言いながら焼けた一切れの肉をタレにつけて頬張る。ごま油と塩を混ぜたシンプルなタレが肉をさっぱりとさせ、それを泡の抜けたビールで流し込んだ。目の前に座る彼は先ほどから携帯電話のSNSアプリで誰かと連絡を取っている。 「大丈夫か?」 「あーうん、大丈夫」  そう言って座り直した彼は元の会話に戻っていった。お互いの仕事の話。普段の生活。環境が変わり前からの友達となかなか会えなくて寂しく感じてることや、変わった結果出会えた人のこと。  1年前もこうして夕飯を共にしたこと。あれは確か、藤沢に泊まったときだったよねと彼は言った。 「なんで別れたんだっけ?」  仕方ない、といった形に彼の口元が緩んでいるのに気づき、安堵した。
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