白く映る

2/2
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
母が死んだ夢を見た。白い部屋で、色褪せたシーツに包まれた掛け布団の中で母は白い顔をしていた。除菌された部屋の空気はツンと無機質に香る。 還暦から一回りした程度の母はこの施設という箱の中では若い方ではあるが、末っ子だった自分からしたら物心ついた時からおばあちゃんだった。授業参観では周りの若い母親と比べ歳をとった自分の母が少し恥ずかしかったが、いつも優しい笑顔を向けてくれていた。 口をぐっと結び静かな顔をした今の母を見て自分は何をしてこれただろうと考える。脳出血を起こしトイレにうずくまる姿を見た日、冷たい鉄の棒を並べた平行棒という器具でリハビリに勤しむ姿を見た日、脳出血を再発し表情を作れなくなってしまった日。 そして今日。繋いだ掌は昨日まで確かに暖かかった。不意に、涙で世界が歪み、再度世界を視認した時にはアラームが鳴り響くワンルームの部屋にいた。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!