第3章 ワナを仕掛ける!

12/59
26人が本棚に入れています
本棚に追加
/325ページ
3  早退する  教室に戻った優希は自分に一斉に向けられてくる女子生徒たちからのハートマークの視線に笑顔を返しつつ、静かに自分の席に着いた。顔には笑みを浮かべていたが、心の中ではさきほど絡んできた『例の倶楽部』の連中について深く考え込んでいた。  どうやら、あの連中の態度から見て、ボクのことを犯人だと考えているみたいだな。  コウという生徒の口振りからして、それはもう間違いないことだった。しかし、踏み込んだことを言ってこなかったところをみると、まだ何も事件についての証拠は掴んでいないのだろう。当然、こちらの正体も知られていないはずだ。だが──。  今までは無視すればいいと簡単に考えていたが、ここまで執拗に嗅ぎまわられると厄介かもしれないな。今のうちに何らかの対策を考えておいた方がいいだろう。そうしないと、こちらの行動にも支障が生じかねないからな……。  ここにきて、あのおかしな名称の倶楽部の連中が俄然目障りになってきた。優希にはやらなくてはいけないことがあるのだ。その為に遠い異国のこの街まで、わざわざやってきたのである。訳の分からない連中に邪魔をされたくはなかった。     
/325ページ

最初のコメントを投稿しよう!