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「だからね、この話を本当にしてもいいのかどうか迷っている部分があるんだけど、あなたたちには必要な話だと思って、ここは清水の舞台から飛び降りる覚悟で……いいえ、東京タワーからバンジージャンプする心構えで……いいえ、スカイツリーからパラシュートで降下する気分で話そうと思うんだけど──」
最後の方は只のアトラクションとしか思えなかったが、アリスは口を挟まずに黙って話を聞くことにした。ほのかの話が脱線することはよくあることなのだ。
「つまりね、簡単に言うと──アルカール・優希くんなんだけど、体調が良くないらしくて、昼休みに早退したわよ」
散々勿体付けられた末に聞かされたほのかの話は、今のアリスたちにとっては聞き逃せない重要な情報だった。
「早退! ほのか先生、それじゃ、優希くんはもう学校にいないってこと?」
アリスは勢い込んで尋ねた。
「そういうことになるかしら。早退ってそういう意味でしょ?」
自分が重大な情報をもたらしたとはこれっぽっちも思っていないほのかが、可愛らしく小首を傾げるポーズを見せた。
「くそっ! あの野郎にまた先を越されたぜ!」
コウがイスを倒すくらいの勢いで立ち上がった。今にも部室から飛び出しそうな素振りをみせる。
「アリス、すぐにカミラさんに連絡を取って!」
のどかがいわんとしていることを、アリスはすぐに悟った。のどかは早退した優希がカミラたちを襲う可能性を考えたのだ。
「分かった。連絡してみる」
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