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尾崎フユオ。
小学校低学年から高校に至るまでの腐れ縁で、教師や親に見つからないところで悪さをするずる賢さを持ついじめっ子。父親似の老け顔をいじられ、標的にされたおれは、プロレス技の練習台にされ、パシリにされ、宿題をやらされ、金をせびられ、小さなことから大きなことまでありとあらゆる嫌がらせを学校にいる間受け続け、人生と人格を全て破壊された。
反抗する体力も気力もなかった。親にも言えなかった。自殺する勇気もなかった。
ストレスで小2で喘息になり、小6で胃潰瘍なり、中学でニキビが大量発生して、病院に通うのが日常になった。
16歳の誕生日前に不登校になり、家にまでは押しかけては来なかったが、パニック障害を発症して精神科に通う羽目になった。
「振り返ってるね~人生」
「え?」
再び女の声がして左を見ると、先程の御者こと「半分骨女」が立っていた。
上半身は裸にマント。下半身には腰巻のようなものを巻いており、砂浜に似合わない、ヒールの高い靴を履いている。顔や腕だけでなく、身体も見事なまでに半分が骨だ。
「お前は何だ。おれの頭の中の幻か?」
「仮にわたしがあんたの頭が生み出した幻だとして、何の問題がある?」
「問題大アリだよ」
自分の頭のなかで一人で会話してるのだとしたら、かなりイタイ奴だ。
「誰に対して気を使ってるの?イタイって誰に思われるっていうの?」
口に出していない心の声を、御者にツッコまれた。
てことはやはりこいつはおれの頭が見せている幻なのだろうか。
確かに砂浜に人の気配はなく、波と風と揺れる木々の葉擦れの音しかしない。幻だろうが、女と会話できるんだから別にいい……のか?
「あんた、名前は?」
「さあ、どうとでも呼んでよ」
「死神……」
「それ以外で」
どうとでも呼べと言ったじゃないかとツッコミたかったが、口には出さなかった。
「半分骨だから、ボーンはん(半)とか、スカルはんとか……」
「もっと可愛いのにしてよ」
「可愛いって言われても……」
スマホで「可愛い 名前」で検索したかったが、ポケットにスマホはなかった。
「じゃ、スカルはんでいいよ。じゃ、あんたのクソ人生の回顧の続きをどうぞ」
「む……」
クソ人生であることに間違いはないが、他人から言われると腹が立った。相手は幻。怒るだけ無駄。おれは再び記憶を辿った。
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