2018年 盛夏

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 カーテンを締め切った孤独の闇の中を、薬で朦朧としながら過ごす日々。  中古で買った長く遊べるゲームを目的もなく延々とやり、気に行ったキャラクターの絵をPCで描いてイラストサイトに投稿して、褒められたりけなされたりするコメント欄でのやり取りだけが唯一の外界との接点。  前向きになれたのは、イラストを描き続けているうちに、ちょっとしたキャラクター等の、 小さなイラストの仕事の依頼が来るようになったことだ。  一つにつき多くて三千円程度の報酬だったが、何もないと思っていた自分が初めて社会に認められたと、何も期待しない人生に希望の光が差した気がした。  少しずつ外に出られるようになり、他人の目が気にならなくなっていった。  精神科の先生と相談して、ほぼ他人と接する必要がない、ラブホテルのベッドメークと自販機交換のバイトを始めた。  見ず知らずのカップルがヤった後の部屋を掃除するのは、はっきり言って最初はかなり抵抗があったが、慣れてくると素手で壁に張り付いた精液を落とせるようになった。  生活の安定が精神の安定につながり、精神な安定が身体にも影響して、不具合も少しずつ改善しつつあった。 「それで上手くいくと思ったら、大間違い」  スカルはんが言った。 「心を読むの、止めてくれよ」 「あたしはあんたの頭が生み出した幻なんだから、仕方ないでしょ?」 「…………」  スカルはんの言う通り、その生活も長くは続かなかった。  ラブホテル業界自体が元々下火で、場末のラブホテルだったウチもほどなくして経営が赤字になり、ビルの解体と同時に廃業が決定。再び無職になり、別のバイト先を探しているさなか、唯一の味方だった母が悪性の子宮筋腫で入院した。  家で会話する相手が完全にいなくなったおれは、母の病気という現実にまともに向き合うこともできず、ストレスでことあるごとにいじめられていた当時のフラッシュバックを繰り返し、奇声を上げて、通報されたりもした。  警察に注意を受けて、玄関の扉を閉じた時、自分こんな人間にした、大木への憎悪の感情を、少しずつ溜め込んでいくようになった。 「いじめられてた頃は、恨んでなかったってワケ?」 「心を読めるなら、分かるだろ。いじめられてるっていう事実を受け入れたくなくて、友達と遊んでるだけって自分に言い聞かせて、毎日をやり過ごすんだ……」
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