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「いいけど……。朝、雪が積もってるって騒いでたから、遊びに行くんだと思ってた」
「ん~。カナと遊ぼうかと思ったけど、たまには、タスクと一緒にのんびりしようかなぁって」
十一歳らしからぬ口調に、タスクの口元に笑みがこぼれる。
「たまにはって、お前……」
「あ、でも、裏庭で雪だるま作ろう?」
「カナちゃんと作らないのか?」
「今日は、カナはいいの」
怒ったような、アクアの口調。
「ケンカしたのか?」
やっぱりという顔をアクアに見られる前に、笑顔で塗りつぶす。
「してないよぉ。帰る途中、ちょっと話しただけだし」
「学校から一緒?まさか、二人で傘も差さないで帰ってきたのか?」
ケンカではなく、アクアが甘えてくる理由。
「カナと一緒じゃないもん。帰るときに会っただけ。おばさんと買い物してたみたい」
「なんだ」
理由に行き着いて、タスクは、小さく笑った。
「カナちゃんまで、びしょ濡れかと思ったよ」
アクアにとって、「家族」は苦手な言葉だった。
アクアには、それがない。他人にとっての当たり前が、アクアにはない。特に、仲のよい親子連れをアクアは、いつも、寂しげに見つめていた。
母親と一緒のカナを見て、アクアのテンションは、一気に下がったのだろう。
甘えている原因は、おそらくそれだ。
「タスク、課題終わったら、一緒に雪だるま作ろう?ね?」
アクアは、カップを両手で包み、冷たくなった手を温めていた。
「買い物も行きたいから、課題、買い物、雪だるまな」
「うん」
弾むような声で、アクアが答えた。
タスクは、窓の外へ目をやった。
まだ、降り続く雪。寒い中、外へ出るなんて腰が引ける。
しかし、アクアの気が晴れるなら、自分も嬉しい。
「ごちそーさまぁ」
紅茶を飲み干して、アクアは、急いで食器を片付けると、課題を取りに、自室へと駆けていった。
時計を見れば、4時前。
「(雪だるまの前に、夕食になりそうだな)」
さっそくリビングで課題を始めたアクアへ目をやって、タスクは、少し困ったように笑った。
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